
2009年6月2日。 岡田武史率いるサッカー日本代表は2010年南アフリカW杯アジア最終予選ウズベキスタン戦に向け成田を発った。 チャーター便で約8時間 無事タシケントに到着したチームは早速練習を開始。 しかし与えられた練習会場は非公開など全く不可能なビルに囲まれたピッチ。 早速アウェーの洗礼を受けた形の岡田JAPANだったが 強い覚悟を持って乗り込んだチームに動じる様子はなかった。
練習中に現地代表関係のカメラがずっと回るというあり得ない環境下の日本に対し ウズベキスタンは完全なる情報シャットアウト作戦で その戦術にぶ厚く不気味なベールをかけた。
スタメン発表。 そこには何と内田の名前がなかった。 突然の体調不良でベンチ入りもしておらず急遽駒野に交代。 この所絶好調の岡崎のワントップ 左に大久保 右俊輔の2シャドー そしてその回りをトップ下の憲剛 遠藤 長谷部が固めた。
自陣前には若手長友に闘莉王、 そして2006年ドイツ後 一旦は代表を離れたはずの中澤が 2010年W杯へ日本を導く為に今またキャプテンマークをつけピッチに立っている・・・
屈辱の2006年W杯から3年 俊輔も 中澤も 遠藤も・・・皆それぞれ ドイツでの忘れものを取り返すためにここにいる。 何としてでも勝利し もう一度W杯のピッチで 今度こそ納得の行く試合をしたい。。。
試合が始まった。
試合当日も雨が予想されていた。 日本にとって恵みの雨となるのか・・・ しかし前日の豪雨にも拘らずボールが全く走らないピッチ。 パフタコールの長めの芝が更に日本の素早いパスサッカーを拒んだ。 深い芝にボールが不規則に弾む、コントロールにやや戸惑いを見せながらも選手達は落ち着いていた。
甘さを断ち切りこの試合に相当なる覚悟を決め乗り込んだ岡田JAPAN、 「アウェーで起こりうるどんな状況にも動揺する事なく 絶対勝利を持って帰る覚悟がある。」 日本を発つ前 そうコメントした監督選手達の強い決意が そんな状態の中 決定的チャンスを作り出した。
9分長谷部から憲剛へとボールが渡った時だった。 憲剛にボールが入るとその直前 パスを信じた岡崎は 右サイド相手DF裏をすう〜っと抜け出し 前線へ飛びだした。
絶妙な飛び出しだった。 それを受けると相手DFを置きざりにし左足でシュート〜!! GKが弾いたものの それを倒されながらもダイレクトで頭で押し込んだ。 ゴ〜〜〜〜〜ル!!! 何よりも欲しかった先制ゴール。 岡崎の泥臭いほどのゴールへの貪欲さが日本中を歓喜の渦に包んだ。 同時に一気に静まり返るパフタコール。
試合前何度もゴンゴールのビデオを見続け気合を入れたという岡崎、そのゴールがこの試合を決める いやW杯出場をも決める貴重な1点になるとはまだこの時 誰も知るはずもなかった。 小さい頃から大事な試合で必ず決めてきたという岡崎、得意のヘッドが日本を更に落ち着かせた。
その後も日本は11分遠藤のセットプレーから大久保が押し込むもオフサイド、13分俊輔も駒野が倒されての素早いリスタートから強烈ミドルでCKを奪い 24分には長友 47分には遠藤のシュート! と 前半は確かにチャンスを作っていた。
しかしこれに一層勢いを増したのは日本ではなくウズベキスタンだった。 プレーオフに出場するには絶対に負けられないウズベキ、この試合に全てを賭けていただろう。 点を取ろうと素早いプレスでいち早くセカンドボールを拾ってはロングボールで一気に攻め込むウズベキスタン、相手FWタジエフの素早い飛び出しにはDFが懸命の対応をみせていた。
全員攻撃全員守備。 高い位置で奪われればすぐさま前線からプレスをかけた。
32分俊輔がイエローを貰った。 散々相手に押し倒されているにも拘らず全く笛さえ鳴らさない審判が ほんの少し足が接触し相手が倒れただけでイエローが出た。 スコットランドでは到底あり得ないカード。 シリア審判団の胸中がはっきり見て取れた。
1点先制してから日本は 相手選手だけでなく 審判との戦いも始まった。 相次ぐファールの笛に募るイライラ・・・ 普通なら考えられないような笛で攻撃が何度も止められては そこから相手にチャンスを与えられた。 逆に明らかな相手のファールには笛さえ鳴らずそこから攻め込まれた。
自陣付近で何度も倒れこみセットプレーを得るウズベキ。 しかしここに日本の成長を見た。
サポーターがこれだけ呆れる審判だ 選手本人達はどんなにイライラしていることだろう・・・ しかしイレブンはそれでも苛立ちを露わにする事はなかった。 納得出来ない笛での何度もの相手のセットプレーを必死のDFで凌ぐ日本、低い位置でSPL仕込みの見事なスライディングを仕掛けたかと思えば 身体をはったプレーで再三相手の攻撃の目を摘むなど俊輔も献身的なDFを見せ 時にはFWも入ってのまさに全員守備状態・・・。
クリアまでもが殆ど相手に渡る中 ピッチ中を走り回り守備で身体を張る中盤。 しかしそんな守備での貢献は 次第に中盤の選手の疲労へと繋がっていった。
深い芝でパスを繋ぐコントロールの難しさも手伝い 低い位置での守備後 そこからドリブルで前線へとボールを運ぶのには困難を要した。
ファールでの相手のセットプレーを避けたい日本。 しかし相手に触らずボールを奪う事は非常に困難、次第にルーズボールも拾えなくなり ウズベキの猛攻が始まった。
数えられない程の相手のセットプレー、ヒヤッとする場面も何度もあったが そこは守護神 楢崎が見事な判断プレーを見せた。 それにつられるように落ち着いた見事な集中力で対処するDF。 危ない!という場面で飛び込み カウンターと見ればいち早く阻止に行く・・・長谷部も守備での大きな成長を見せていた。
前半0−1で折り返した日本。 だが後半も 日本はボールコントロールに苦しみパスが中々前線まで繋げられない。 殆ど攻撃を組み立てる余裕もなく守りに時間を取られた。
20分だった。 憲剛に代わり本田 23分には大久保に代わり矢野が投入された。 しかし戦況は全く変わらず。
攻撃陣を投入し 少しでも前線でキープし守備の負担を軽くするのが目的だったのか・・・
しかし27分 右サイドで俊輔が倒されようやく笛 FKを得た。
そこから左CK 更にはまた中央からのFKと 続けてチャンスを得た。 追加ゴールは奪えなかったものの やっと作れた日本のチャンス・・・
あと10分。。。しかし 必死でDFした後の攻撃にやや攻め急ぐ場面も見られた。 一気にエリアに縦パスを入れては奪われて速攻・・・。 明らかに中盤に疲労の色が見え始めた。
43分自陣右 長谷部が肘うちしたと かなり後になってから笛が吹かれた。 主審が流したにも拘らず 長谷部には信じられないレッドが提示された。 納得がいかず中々ピッチを出ない長谷部に更に注意が与えられ それを間に入った俊輔が宥めた。 いや そこには時間を少しでも稼ごうという長谷部の絶妙な駆け引きがあったのかもしれない・・・。
その直後だった。 岡田監督が10人になった選手達に指示を出した。 そして90分俊輔に代わり阿部を投入。 すると今度は何と岡田監督に退場命令。
審判の相次ぐあり得ない判定に 監督は右手を振り上げながら スタジアムの奥へ下がり ロスタイムを見守った。
試合終了〜!! 終了間際 3本ものヒヤリとさせられる相手のシュートがあったが 楢崎の好セーブと 相手の精度に救われ 日本は最後まで岡崎の1点を守りきった。
終了の笛と共に 次々抱き合う選手達。 その表情には やりきったという何ともいえない達成感が溢れていた。
楽なグループに入ったと W杯4連続出場が当たり前のように語られる事もあった。 しかし例え毎回顔を出す強豪国といわれる国であっても 出場が楽に決まるほどW杯は甘くない。 だからこそ価値がある大会であるとも言えるのだ。
世界最速での出場決定に 監督 選手達は 「ようやくスタートラインに立った所」とコメントした。
2006年 痛恨の敗退をバネに 「世界を驚かす覚悟」で南アフリアカへと挑む日本代表。 この所1試合1試合毎に 確実にその実力を上げてきている。
決していい内容ではなかった。 この内容に批判もあるだろう。 しかし難しいアウェーに加え 審判の相次ぐ不可解な判定・・・こんな状況の中でも 先制し 最後まで相手の猛攻に怯む事無く 落ち着き 最後まで守りきった日本に 今までにはない精神的タフさを感じると同時に また新たな引き出しが増えたと大きな手ごたえを感じた。
ウズベキスタンに そして 審判にも勝った日本。。。
10日にはもうカタール戦が行なわれる。 これは決して消化試合などではない。 本番に向けての貴重なチャンスだ。 一人一人が更なる大きな目標を持って臨み 1位通過目指し しっかり勝ち点3を奪って欲しい。
耐えに耐え 苦しんで ようやく勝ち取ったこの南アフリカへの切符。一人二人のカリスマ選手などいらない。 選手全員が各々のポジションで誰にも負けないカリスマ性を発揮し 日本を 世界を驚かすサッカー強豪国へと導いて行って欲しい。
試合からたったの4時間後チャーター便に乗り込んだ代表は7日昼過ぎ成田に到着。 カタール戦に向けそのまま横浜へと向かった。
選手全員で宿舎での会見を終えると 夕方早速軽い練習へと繰り出した。
スタメン出場した選手は練習免除だったにも関わらず俊輔はもう一人の中村と共にしっかり参加。 軽いジョギング等で身体を動かした。
1位突破目指しカタール戦へ・・・ 早くも新たなスタートが切られた。